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オーバーランとは
野球のルールの1つに、「オーバーラン」といものがあります。
「オーバーラン」とは、走者が進塁した後、余勢により、その塁を行き過ぎることを言います。野球では、走者は4つの塁を順番に触れて進まなければなりません。そして、「オーバーラン」は、1塁では、セーフになった後、条件付きで許され、本塁では、触塁の時点で得点が認められるので、許されています。逆に、2塁、3塁では、オーバーランすることは、認められていません。塁を追い越した時に、タッチをされれば、アウトになります。特に、2塁や3塁では、滑り込みの余勢のために塁から離れてしまうことが良くあります。これを、「オーバースライド・オーバースライディング」と言います。
ここでは、オーバーランについてルールを基に解説していきたいと思います。
ルール
- 打者走者が1塁でセーフになり、オーバーランやオーバースライドをした後、直ちに1塁に帰ることを条件として、1塁を離れている時にタッチされても、アウトにならない。
- 打者走者が1塁でセーフになり、オーバーランやオーバースライドをした後、直ちに1塁に帰らなかった時、または、1塁をオーバーランやオーバースライドをした後、2塁に進もうとする行為を示した時、タッチされれば、アウトになる。
ここでの、ルールを確認しながら、オーバーランについて理解していきましょう。
オーバーランをするのはフェアゾーン?ファウルゾーン?
学童野球において、「オーバーランは、ファウルゾーンでしなさい。」と教える指導者が多くいます。実際、このように教えられた方は、結構、いるのではないでしょうか。私も、そのような経験があります。しかし、プロ野球やメジャーリーグの試合を観てみると、フェアゾーン、ファウルゾーン関係なくオーバーランをしています。では、オーバーランは、フェアゾーンですべきなのか、それとも、ファウルゾーンですべきなのでしょうか。
結論としては、「フェアゾーン・ファウルゾーンのどちらでも良い」です。
上のルールには、「オーバーランは、フェアゾーンでしなければならないとも、ファウルゾーンでしなければならない」とも、書かれていません。実際、試合で、フェアゾーンにオーバーランをしたからと言って、アウトになることはありません。
事例として、2021年の東京オリンピック、日本-韓国の試合でも、このようなことが起きました。打者走者の近藤選手は、1塁ベース上で、一塁手との接触を避けるために、フェアゾーン側に、オーバーランをしました。それを見た韓国の一塁手は、近藤選手にタッチをしました。皆さんが審判だった場合、どのような判定をしますか?「オーバーランは、ファウルゾーンでしなさい」と教えられた人は、この場面で、アウトを宣告するかもしれません。しかし、正しい判定は、セーフなのです。
では、学童野球において、なぜ、「オーバーランは、ファウルゾーンでしなさい」と教えられるのでしょうか?
それは、 オーバーランをファウルゾーンですることのメリットを分かりやすく教えられるからです。 上で説明したように、ルール上ではオーバーランは、フェアゾーン・ファウルゾーン、どちらでしても問題ありません。
そして、オーバーランをフェアゾーンですることは以下のようなメリットがあります。しかし、「オーバーランは、ファウルゾーンでしなさい」と断定的に教えてしまうことは、間違ったルールを教えていることになります。この教え方は、半分正しく、半分間違っているものと言えます。
- オーバーランをファウルゾーンですることのメリット
- 1塁付近での接触を防ぐため
- 審判に動きを勘違いされないようにするため
- 間違っている理由
- ルールとしては、間違いだから
- ルールを理解しないで、なんとなくで教えている人がいるから
まず、オーバーランをファウルゾーンですることのメリットとして、「1塁付近での接触を防ぐため」ということがあります。スリーフットラインと走路の記事(「走路」と「スリーフットライン」とは ~野球の気になるルールを解説~ | へいほーブログ (heihorblog.com))でも書きましたが、1塁付近は、多くのプレーが行われます。そこで、一塁手との接触を防ぐため、一塁手の守備を妨害しないために、スリーフットレーンを走ることが大切だと解説しました。そして、ファウルゾーンであるスリーフットレーンを走る流れで、オーバーランもファウルゾーンでするべきだという考え方で、「オーバーランは、ファウルゾーンでしなさい」という教え方があります。
次に、オーバーランをファウルゾーンですることのメリットの2つ目として、「審判に動きを勘違いされないようにするため」ということがあります。これは、後で解説するのですが、オーバーランやオーバースライドをした後、2塁に進もうとする行為を示した時、1塁に安全に帰塁する権利が無くなります。ファウルゾーンであるスリーフットレーンを走った後に、フェアゾーン側にオーバーランをすると、2塁に進もうとしているように見えます。審判に勘違いされないように、ファウルラインを基準として分かりやすく教えるために、「オーバーランは、ファウルゾーンでしなさい」という教え方が広まりました。
あくまでも、その判断は、審判がするものなので、勘違いされないためにも、オーバーランをファウルゾーンでするのは、大切なことだと言えます。
次に、間違っている理由として、「ルールとして間違いだから」です。上では、正しいとされる考え方を示しましたが、ルール上では、オーバーランはファウルゾーンでしなければならないとは書かれていません。「オーバーランは、ファウルゾーンでしなさい」と断定的、限定的に教えることは、間違ったルールを教えてしまっていることになります。また、フェアゾーン側でオーバーランをしていれば、防げた接触があったなどという事例もあります。
また、指導者もルールを理解しないで、なんとなく教えているということがあります。「自分はそう教わったから」と言って、正しいルールを理解しないで、教えてしまう人がいます。先にも述べたように、オーバーランをファウルゾーンですることのメリットはありますが、ルールをしっかり理解し、正しいルールを指導していくことが大切です。
ここまでのまとめ
- オーバーランは、フェアゾーン・ファウルゾーンのどちらでも良い
- オーバーランをファウルゾーンですることのメリットはある
- しかし、正しいルールを理解し、指導していくことが大切
オーバーランをフェアゾーンですることも、ファウルゾーンですることも、両者、メリットがあります。ただ、「オーバーランは、ファウルゾーンでしなさい」と断定的、限定的な教え方をしてしまうのは、間違ったルールを教えていることになるので、気を付けなければならない。
オーバーランをした後にアウトになる場合がある
オーバーランをした後にアウトになる場合があります。それは、ルールの2つ目で、示した通りになります。
- 打者走者が1塁でセーフになり、オーバーランやオーバースライドをした後、直ちに1塁に帰らなかった時
- 1塁をオーバーランやオーバースライドをした後、2塁に進もうとする行為を示した時
特に、誤解が多いのが、「2塁に進もうとする行為を示した時」という所です。「オーバーランは、ファウルゾーンでしなければならない」という間違ったルールの認識から、「ファウルゾーンにいれば、安全である」と勘違いしている人がいます。オーバーランにおいては、フェアゾーンか、ファウルゾーンかは、あまり関係ありません。大事なことは、2塁に進もうとする「行為」です。上でも説明したように、オーバーランやオーバースライドをした後、2塁に進もうとする行為を示した時、1塁に安全に帰塁できる権利は無くなります。そこで、守備側の選手にタッグされれば、アウトになります。
そして、この行為を判断するのは、審判です。明確な基準がないからこそ、分かりにくいと感じる人が多いように感じます。しかし、「場所」ではなく、「行為」に注目すれば、簡単に理解できると思います。多くの人が難しいと感じているからこそ、いざという時に対応できるようにしっかり理解しましょう。
「オーバーラン」についてのまとめ
ここまで、「オーバーラン」について解説してきました。
- オーバーランは、フェアゾーン・ファウルゾーンのどちらでも良い
- オーバーランをファウルゾーンですることのメリットはある
- しかし、正しいルールを理解し、指導していくことが大切
- オーバーランは、「場所」ではなく、「行為」で判断
特に、最後に書いた、オーバーランは、「場所」ではなく、「行為」で判断するということが大切です。「オーバーラン」は、野球において当たり前に行われています。当たり前のことだからこそ、もう一度確認してみるのは、どうでしょうか。ルールを理解すれば、野球をするのも、観るのも、楽しくなります。この記事で、皆さんの野球の知識が高まれば、嬉しく思います。