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野球の不文律(アンリトンルール)とは
皆さんは、「野球の不文律(アンリトンルール)」というものをご存知でしょうか?メジャーリーグ(MLB)や日本プロ野球(NPB)には、公認野球規則(ルールブック)に書かれていないが、守らなければいけない不文律(アンリトンルール)というものが存在します。
そして、この不文律(アンリトンルール)を破ると、故意死球などの報復を受けることがあります。特に、メジャーリーグでは、不文律(アンリトンルール)が強く根付いており、チーム・チームメイトを守るために、監督が指示して、報復が行われることがしばしば起きます。
ここでは、野球の不文律(アンリトンルール)の内容、実際に起こった報復の事例、不文律(アンリトンルール)の是非について、解説していきたいと思います。野球の少しグレーな部分ですが、考えることは、野球をより良いものにするために、大切なことです。では、やっていきましょう!
不文律(アンリトンルール)の内容
まず、どのようにして、不文律(アンリトンルール)は、できていったのでしょうか。
野球の不文律は、長い野球の歴史と共に形成されてきました。
不文律が形成されてきた理由としては、「勝負の勝ち負けに関係なく、相手への敬意を表す」ためです。
スポーツマンシップに基づいて、相手をリスペクトすることは、勝敗と同じくらい大切にされていることです。特に、勝負が決まっている試合において、負けているチームをさらに貶めるようなことや、記録が乱造されることを避けるために不文律(アンリトンルール)が作られました。では、具体的には、どのような不文律があるのでしょうか。
不文律の内容としては以下のものがあります。(一例)
- 大差(6点以上)でリードしている攻撃側は、カウント3ボール・0ストライクから打ちにいってはならない。また、バント、盗塁を行ってはならない。
- 併殺打を防ぐ目的などで、危険なスライディングをしてはいけない
- 打者は、ホームランを打った時などに、バットフリップをしたり、過度なガッツポーズをしてはいけない。また、投手は三振を奪った時などに、過度なガッツポーズをしてはいけない。
- 捕手のサインを盗み見てはいけない。また、二塁走者が打者にサインを教えてはいけない。
- 相手投手がマウンドで投球練習中に、ダートサークル(本塁周辺の円形の部分)上に入ってはならない
- もし、乱闘が起きた場合は、野球道具を使用してはならない。また、乱闘には参加しなければならない。
- 報復のための故意死球は頭を狙ってはいけない
これら以外にも、たくさんの不文律が存在しています。そして、不文律を破ってしまったら、故意死球などの報復を受けることがあります。では、実際に起こった報復には、どのようなものがあるのでしょうか。
実際に起こった報復の事例
- 2020年シーズン、パドレス対レンジャース戦で起こった不文律破りと報復死球
- 2021年シーズン、レッズ対カージナルス戦で起こった不文律破りと報復死球
- 2021年シーズン、ホワイトソックス対ツインズ戦で起こった不文律破りと報復
まずは、「2020年シーズン、パドレス対レンジャース戦で起こった不文律破りと報復死球」です。
試合は、8回で10-3とパドレスが7点差でリードしている場面。1アウト満塁、3ボール・0ストライクからの一球を、打者のタティス Jr選手が豪快に振り抜き、満塁ホームランを打ちました。これに対し、レンジャースの投手は次の打者に対して、報復死球を行いました。
これは、「大差(6点以上)でリードしている攻撃側は、カウント3ボール・0ストライクから打ちにいってはならない」という不文律を破ったことになります。
これに対し、パドレスの監督は、「一球待つべきだった。サインは出したのだが。」と不文律を尊重する考えを示しました。また、当事者であるタティス Jr選手も、「サインを見落とした。不文律を破った自分が悪い」と謝罪しました。
2つ目は、「2021年シーズン第2戦、レッズ対カージナルス戦で起こった不文律破りと報復死球」です。
開幕戦の3回裏、レッズの攻撃、打者は、カスティヤノス選手。カスティヤノス選手はこの打席でホームランを打ちました。開幕戦とあって喜びを爆発させながら、一塁に向かって、スキップをしながら、さらにバットフリップをしました。これに対し、カージナルスは怒り、シーズン第2戦でカスティヤノス選手に報復死球をしました。
これは、「打者は、ホームランを打った時などに、バットフリップをしたり、過度なガッツポーズをしてはいけない 」という不文律を破ったことになります。そして、その後、報復死球によって、両チームの乱闘となってしまいました。
最後に、「2021年シーズン、ホワイトソックス対ツインズ戦で起こった報復死球」です。
試合は、9回で15-4とホワイトソックスが大差でリードしている場面。ツインズは、大差がついて、投手陣を温存したい考えから、マウンドにそれまで捕手をしていたアストゥディーヨ選手が立ちました。そして、打者のメルセデス選手は、3ボール・0ストライクからの一球を豪快に振り抜き、ホームランを打ちました。
これは、「大差(6点以上)でリードしている攻撃側は、カウント3ボール・0ストライクから打ちにいってはならない」という不文律を破ったことになります。
これに対し、ホワイトソックスのラルーサ監督は、「あれは、大きな間違いだったし、腹が立った。これは、スポーツマンシップについてのことだ。相手をリスペクトしなければならない。」とコメントし、自軍の選手であるメルセデス選手を非難しました。
そして、翌日、メルセデス選手は報復死球を受けてしまいました。報復を受けたホワイトソックスのラルーサ監督は、「私は、ツインズのやったことに問題があるとは思わない。」とコメントし、自軍の選手を守ることよりも、不文律を守ることの方が大事であるという考えを示しました。
これらの不文律に対し、現地の報道では、「時代は変わった。新しい世代に好きにプレーをさせるべきだ」と報復を行ったツインズとそれを擁護したラルーサ監督を非難しました。また、当事者であるメルセデス選手は、「これが私のやり方だ。そこを変えてしまったら、全てを変えることになってしまう。私は、ただベースボールを楽しんでいるだけ。」コメントし、自らの考えを強調しました。その他にも、サバシア投手(ヤンキース)やバウアー投手(ドジャース)など、不文律について懐疑的な考えを持っている選手が多くいます。
野球の不文律(アンリトンルール)は必要なのか?
特に最後に紹介した事例のように、不文律(アンリトンルール)という古いものに縛られるべきではないという考え方は、広まってきています。上で紹介した不文律は、試合に直接、影響するものです。不文律を気にしなくてはならないことは、自由なプレーが制限されてしまうことになります。不文律は本当に必要なのか、報復をすることは、必要なのか、野球をより良いものにしていくために、私たちは考えていかなければなりません。特に、報復死球は命にもかかわるものです。また、報復が新たな報復を呼んで、数シーズンに渡り、報復をし合っているケースもあります。今では、不文律・報復はメジャーリーグの一部になっています。私たちは、不文律・報復の是非について、考えていくことが必要になってきます。